大学時代の同期だった彼女が膵臓癌だとわかったのは、一昨年の秋でした。それからずっと、一緒に病気と闘ってきました。毎日連絡を取り合ってきたから、お互い知らないことはないくらい。家族と同じくらい大切な存在でした。
彼女は6月半ばまで大好きな子どもたちのいる小学校に勤務し、退職したその日には「教職に悔いなし」と。その後入院し、それからまもなく緩和施設へ。
あの日、いつものように緩和施設に面会に行きました。病気を真摯にケアしてくれていた友人も一緒に。
小さな声だったけれど、彼女はしっかりと会話をしていました。のどがかわいたというので、体を起こして支え、ストローでお水を飲ませると、びっくりするほどごくごく飲みました。友人が足をさすり、私が手や腕をさすっていると、背中がつらい、さすってと。痩せた背中を、ずっとさすっていました。彼女は、「気持ちいい」「長く...ありがとう」と、小さな声で言い目を閉じていました。
数十分経った頃、呼吸が少し荒くなり、少しおかしいなと思って名前を呼ぶと、目を開けたけれど目線が合わない。すぐにナースコールを押しました。彼女はそのまま眠りに入り、いっぱい呼び掛けたけれど、しばらくして呼吸をしなくなりました。顔はまだあたたかいのに、握った手は指先からだんだん冷たくなっていく。魂が体から離れてしまったのだと友人に言われ、はっと我に返りました。まだ早いよ、逝かないで。
彼女のお通夜の日、斎場に着いたときには小雨が降っていました。お焼香をして空を見上げると、いつの間にか雨はやみ、空にはとても大きな虹が。彼女があそこにいるんだねと、みんなで話しました。
今まで本当によく頑張ってきたね。もうつらい思いをしなくていいんだね。彼女のいないこれからの人生を、私はまだまだ受け入れられずにいます。